5.許可の判断

農地を転用する場合は、次に該当する場合は許可されませんので注意してください。以下にあまり現実的でないもの以外を箇条書きで示してみます。

(1)農用地区域内にあるもの。集団的農地内にあるもの。(農地法第5条第2項第1号)

これは、後述する「農振除外とは」以降で詳しく説明します。要するに、田んぼや畑が広がっている農用地区域内(俗に言う「あお」「あおあお」地区)では、除外手続きを経ていないものは農地転用できませんということです。

農用地区域内かどうかを確認するには、農地がある市役所の農政課か農業委員会に電話をすればすぐ教えてくれます。電話の仕方は「大字○○△△△△番地は農用地区域内ですか?」と聞けば、すぐ教えてくれます。

また、農用地区域外でも集団的に存在する農地として市町村が捉えている場合も同様に農地転用が認められません。「集団的」というのは平成21年の農地法改正により20haから10haに改正されました。したがって申請地付近が農用地区域外であっても農地が広がっている場合は要注意です。これに該当するかどうかは市役所農政課か農業委員会に電話をすれば教えてくれます。

(2)権利を取得しようとする者(4条では申請者、5条では譲受人)が転用行為を行うために必要な資力及び信用がない場合。(同3号)

「資力」は、文字通り転用するためにはお金が必要で、そのお金があるかどうかを確認するものです。添付書類に転用行為にかかる見積書をつける市町村がほとんどで、その額より多い預金残高があるか、または融資を受けるかをみます。そのため残高証明書か融資証明書を添付書類としている市町村が多いです。

問題は、「信用」です。これは何を意味するかというと違反があるかどうかということです。違反があるとまた違反をするのではないかということで「信用」が欠けることになります。

では、どうやって違反があるかどうかを確認するかというと、申請地の農業委員会では譲受人(4条の場合は申請人)が申請地に住所がある場合は、農地法違反者リストが必ずあるので、そのリストに載っているか確認します。これはどこでもやることです。

それとは別に、きっちりやっている農業委員会では、都市計画課や建築課に問い合わせて、都市計画法違反や建築基準法違反があるかどうか確認します。

また、譲受人(4条の場合は申請人)が農地を持っている場合は、農地台帳上の農地の現況地目が全部田や畑であるか確認します。もし、現況地目が雑種地や宅地になっていると違反転用していることになるからです。これらに該当しなければ「信用がない」には該当しません。

ついでに申しますと、「資力及び信用」は「権利を取得しようとするもの」のみに該当しますので、5条の場合は譲受人(4条の場合は申請者)だけが資力・信用があるかを確認します。

ところが市町村によっては5条の場合、譲渡人にもこの「資力及び信用」があるかどうかを判断している市町村があります。もちろんこれは違法になりますが、代々そうやって誤解して引き継いでいる農業委員会があると聞いたことがあります。

例えば、よくあるパターンを例にあげます。窓口で「孫の家を私の畑に建てたいんだけど」と相談すると、「あなたに農地法違反があるので受付できません」などといわれることがあります。これはいわゆる分家申請で、譲渡人である地権者が窓口に来た人になり、譲受人が孫にあたる5条申請になるわけです。

条文を正しく理解していれば、譲渡人である窓口に来た人に違反があっても、譲受人である孫は大体のケースとして、農地も持たず建物もないケースがほとんどですので、孫は違反していないことになり、譲受人は「信用がない」には該当しません。

それともうひとつ問題なのは、「受付できません」ということです。申請書と添付書類がそろっていれば受付を拒むことはできないのです。ですので、もし「受け付けできません」と言われたら、そのことを問いただし受付をしてもらって、仮に市町村農業委員会で不許可相当と判断され都道府県に進達しても、都道府県では「信用がない」という理由では不許可にはしないと思われます。

これを勘違いしているか、拡大解釈している農業委員会が多いと聞きますので毅然とした態度で臨みましょう。

(3)申請に係る農地を農地転用する行為の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていない場合。(同3号)

これは、三つ考えられます。一つ目は土地登記簿謄本の乙欄に権利者がいる場合で、多いのが財務省と金融機関です。相続税納税猶予を受けているために財務省の抵当権が設定されたり、銀行から借り入れをして抵当権が設定されたりする場合が多いです。

二つ目は、農地を農地のままで貸し借りしている場合です。これは農業経営基盤強化促進法による利用権設定(農地の貸し借り)がされている場合です。また、農地法第3条による使用貸借権や賃借権が設定されている場合もあります。

これらが設定されているかどうかは農業委員会に確認しましょう。農業経営基盤強化促進法による利用権設定の解除は簡単にできます。詳しくは市町村農政課または農業委員会に問い合わせてください。

農地法第3条による使用貸借権や賃借権が設定されている場合は、農業者経営移譲年金を受給するために親子間で使用貸借権が設定されている場合があります。この場合は農地法第18条による合意解約が簡単にできます。ちなみに、合意解約するには合意解約書と合意解約通知書を農業委員会に提出する必要があります。合意解約書と通知書は農業委員会の所定の書式があります。インターネットでも「農地合意解約書」と検索すれば各市町村の書式が見つかります。

問題なのは、第三者に農地法第3条の使用貸借権や賃貸借権が設定されている場合です。このケースは稀ですが、上記の親子間と同様に合意解約に応じてくれれば何の問題もないですが、親の代から何十年も続いているケースが多く、合意解約するのに離作料を請求されたり解約を拒否されたりする場合があります。

さらにもつれると農事調停の場で争うことにもなります。農地法は元々戦前の教訓から、地主よりも小作農家の権利を守る性格を持っています。
仮に、10年の賃借権の設定をしたとしたら、10年ごとに自動更新され続けます。解約する場合は9年経過後から9年半経過までに、解約の申し入れをしないとなりません。

例えば、昭和60年に10年の賃借権の設定をした場合、平成5年か平成15年か平成25年に、半年間だけ許された期間があります。その間に解約の申し入れをしないと解約できないことになります。もちろん、途中でも解約ができますが都道府県知事の許可が必要になります。

これらの権利が設定されている場合は、その権利を解約するか、その権利者に「農地転用することを同意する」という書面が必要になります。


(4)申請に係る農地を申請に係る用途に供することが確実と認められない場合。(同3号、農地法施行規則第57条)

これは、例えば譲受人が住宅を建てる申請である場合、都市計画法では家が建てられない要件の譲受人であったり、場所であったりする場合は、仮に農地転用が間違って受け付けられても、家が建つ見込みがないということで、その目的が達成できないことを言っています。

また、よくあるケースですが、家を建てる計画が具体化していないのに、とりあえず農地転用だけしておくといった場合もあてはまります。

これらは、転用しても開発の見込みがないため、農地転用の許可を出しても申請に係る用途に供することが確実ではないため許可になりません。

(5)周辺農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合。(同4号)

これは、農地転用されたために付近の農地や用水に、重大な支障を及ぼす可能性があることが予想される場合に適用されます。

例えば、まわりが田んぼでそこに自動車修理工場を建てる申請である場合は、自動車工場の油が雨などで周辺の田んぼに流れ込む恐れがあるため、許可にならない可能性があります。

このように周辺農地に有害なものが流出する場合や飛散する場合、高い建物などができることによって、日照時間が極端に短くなる場合なども考えられます。

(6)一時的な利用に供するために農地を転用しようとする場合において、その利用に供された後にその土地が耕作の目的に供されることが認められない場合。(同6号)

これは、一時的に農地としてではなく別の用途で土地を利用する場合、その一時使用目的が終わった後に、農地に復元できないほどひどい使われ方が予想される場合に適用されます。

例えば、工事のための仮設の資材置場や通路であったりする場合が考えられますが、有害物質の仮置場や大型工事用車両が頻繁に通行することで、耕作できる状態に戻すことが困難になる場合などは許可されない場合があります。

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