7.農地転用の留意点

(1)立地基準を確認

最初に市街化区域にある農地の場合は、以下のことがまったく該当しないことを先に申し述べておきます。市街化区域にある農地は、簡単な届出で農地転用が済みますので農地であっても気にする必要はありません。普通に不動産屋で売買を依頼してください。詳しくは「市街化区域の農地転用手続き」のページをご覧ください。

農地転用する場合は、第一に立地基準を確認してください。先に述べたように、転用予定地が「あお」地区(農用地区域内)の場合は、除外から農地転用の許可がおりるまで早い市町村で1年、遅い市町村では2年近くかかります。

しかも除外の受付期間が年に1、2回というところがほとんどですので、受付期間がうまく直近であればいいですが、半年後・一年後に受付して、それから1・2年では余計時間がかかります。それから工事に取り掛かるわけですから、前述の期間に工事期間を足して考えてください。

このように、農地所有者ではなくて転用する場所を探す場合は、「あお」地区(農用地区域内)以外を探しましょう。もし、どうしても農用地区域内での農地転用を考えるのであれば、実際に除外手続きにどのくらいの期間がかかるかを市町村農政課で確認してください。

(2)農地の探し方から契約まで

農地を持たない人の農地転用の場合は、5条申請になりますが、その前に先に述べた場所の選定が第一です。場所の選定は何ヶ所か、できれば数十ヶ所選定しておきましょう。

転用予定地の市町村を選んだら、まずは農業振興区域図を市町村農政課で入手しましょう。それには色分けされて農用地区域内か農用地区域外かが一目でわかるようになっていますので見てみましょう。市町村によってはこの地図を発行していないところもあるので、その場合は市役所農政課に電話で地番を言って教えてもらいましょう。「あお」地区(農用地区域内)の場所は、先述の通り、許可までかなりの期間がかかりますので、それを見越した申請をするか、最初から「あお」地区(農用地区域内)をはずして「しろ」地区(農用地区域外)を選定しましょう。

場所の選定が終われば、あとは法務局で土地登記簿謄本を取ったり閲覧したりして、その土地所有者を調べ、直接掛け合ってみましょう。兼業農家や相続で農地を取得した人の多くは、金銭的な条件が合えば聞く耳を持ってくれるはずです。

というのは、毎年8月1日に小作地所有状況調査という調査を全国の農業委員会が行っていて、それには全農家に農業経営意向を問う部分がありますが、「今後農業経営をできれば縮小したい」「やめたい」という農家がとても多いのが現状です。それは兼業農家や相続で農地を取得した人に特に顕著です。こういった人をターゲットにすれば比較的交渉はまとまりやすいでしょう。

実際の売買には、宅地建物取引業の免許を持った人(不動産業者等)に依頼するのが安心ですが、当然手数料がかかります。手数料は取引額の3%+6万円+消費税(400万円以上)だったと思います。例えば500万円であれば220,500円です。詳しくはネットで調べてみてください。

自分で取引する場合は、土地売買契約書または土地賃貸借契約書を用意しましょう。ネットで検索すると色々様式が見つかります。権利書、金銭、土地の引渡し方法などで合意が得られれば契約書を取り交わしましょう。

いずれにしても、農地転用許可が取れたらという条件にした売買または賃貸借契約が必要です。その条件がないと仮に不許可になった場合は登記上で反映されず、単なる売買予約の登記だけになってしまいます。気をつけましょう。

(3)農地転用を業者に依頼する留意点

農地転用手続きは慣れてしまえば簡単なものですが、役所や関係部署に何回か行ったり、添付書類をそろえたりとても面倒です。面倒だから業者に任せたいと思っている人は以下の点に留意して依頼してください。任せる業者は不動産業者や建築業者や測量事務所や行政書士です。

先にも述べたように許可が微妙な案件の場合は、業者の手腕によるところが大きいです。農地転用に手馴れた業者は、あの手この手で添付書類を充実させて許可を取り付けます。

駄目な業者は、普通の申請をして窓口で農業委員会事務局職員から、取り下げ指導をされてそのまま退散です。ここら辺の業者の見極めは難しいですが、電話で依頼する際に「農地転用はよく手がけていますか?」と聞いてみるのも一つの手です。正直に「あんまりやったことがない」という業者はやめておきましょう。

不動産業者の場合は、農地転用申請だけを行政書士に依頼するケースもあります。手数料がそれに反映されているのかどうなのかは不明ですが、いずれにしろ手馴れた行政書士に依頼している業者であれば問題ないでしょう。

また、教えてくれるかどうかわかりませんが、農業委員会事務局に電話して「よく農地転用申請する業者はどこですか?」と聞いてみるのも一つの手です。

(4)申請書の書き方と添付書類のそろえ方

申請書と添付書類は、事務局職員や農業委員が見て、「おかしな」部分があればそこを徹底的に調べてきます。

例えば、貸し駐車場目的の農地転用で、車検証の名義人が全員申請地から遠くの住所であれば、近所の人の要望があって転用するはずなのに、どうして遠くの人ばかりの住所になっているのか、などです。これは実際にあった話しですが、調べてみた結果、なんでもいいから農地転用許可を取って雑種地にしてから売買するつもりだったらしく、車検証の写しは友人知人のものを集めたものでした。当然不許可になりました。

書類や添付書類は不備の可能性はあっても「おかしくない」のが当たり前です。嘘の申請はツジツマがあわないことがどこかに出てくることがよくあります。と言っても手馴れた業者は、完璧に書類を整えてくる業者もいることは事実です。

(5)地元農業委員を見方にする

許可が微妙な場合は、申請地の地元農業委員には、仲良くなれるものであれば仲良くなっておきましょう。地元農業委員には代理人だけではなく、譲受人の方も同行するとよいでしょう。

地元農業委員には農地転用の必要性や内情を、その農業委員の資質にもよりますが本音と建前をうまく説明しましょう。地元農業委員は農業委員会総会の場で説明をしますので、その農業委員の説明いかんでは不許可相当でも許可相当になるケースが多々あります。

許可相当で都道府県に進達されると、だいたい許可になります。ただ、これは農業委員の人物の資質にもよります。団体推薦や高齢や新任の農業委員になった人に多いのですが、いかにも「農家のおっちゃん」みたいな農業委員は発言力や説得力がありません。こういう人には、かかわっても時間の無駄です。理路整然に自分の考えを持っているような、雄弁な農業委員とはぜひ仲良くなっておきましょう。

(6)税金のことを知っておく

税金の面でも留意する必要があります。必要以上に農地転用をしてしまうと、当然固定資産税がその分賦課されます。

私の市での例を挙げると  調整区域にある500uの田んぼであれば 500u×評価額(場所によるが1u約100円)×税率1.4%=年間税額700円であったのが、宅地にすると500u×評価額(場所によるが1u約20,000円)×1.4%=年間税額140,000円   雑種地であればその3割 140,000円×0.3(雑種地課税)=年間税額42,000円になります。詳しくは地元市役所資産税課に問い合わせてください。

このように、ほとんどただみたいな税金が、約60倍から200倍に跳ね上がります。必要面積以上の農地転用は、税金面で毎年重くかかってきますので留意しておきましょう。

ちなみに、資産税課と農業委員会は情報を共有している市町村がほとんどですので、農地転用許可されるとその情報がそのまま資産税課に筒抜けになるので課税逃れはできないものと思ってください。


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