農地売買で許可が必要か必要でないか

農地の売買や貸借には許可が必要と説明しましたが、農地法第3条第1項で農地法の許可を必要としない例外規定があります。あんまり関係なさそうなものを除いて説明します。

(1)農地法上の例外規定

@農業経営基盤強化促進法第19条の規定による公告があった農用地利用集積計画の定めるところによって権利が取得される場合。

これは農家が実際に農地を耕作目的で貸し借りするのに使うことが多いものですが、農用地利用権設定等申出書を市町村に提出すると簡単に農地を借りられるというシステムです。公告がされた時点で、この法律によって売買や貸借が成立しますので農地法を使うまでもないという意味です。実際の農地の貸し借りに限っては、9割以上がこれにのっとっています。

A農事調停によってこれらの権利が取得される場合。

これは農地を占拠されたとか返してくれないとかの事例で、調停による権利が設定される場合です。私が聞いた実際にあった事例は、親の代から貸していた農地が、代替わりによって返還要求したが応じない場合がありました。これは非常に稀なケースです。

B包括遺贈

農地を親から相続した場合や調停・裁判によって権利が取得される場合。逆に言うと特定遺贈は農地法第3条の許可が必要になるということです。これは普通であれば亡くなった農地所有者の妻と子に相続されて許可不要ですが、ある農地だけを妻子がいるのに亡くなった方の弟に相続させるように遺言執行した場合などが特定遺贈にあたります。

(2)判例上や解釈上許可が必要ないとされるもの

@時効取得

10年以上所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の農地を占有していた場合(悪意または故意の占有は20年)。例えば農地を自分の農地と思い込んで実質的に10年以上管理していた場合などです。その間、土地所有者から何の主張もなくて、10年経過した場合などはこれにあたります。実際にこのようなケースが多いかどうかは分かりませんが、お互い親戚同士でこのようなケースがよくあると聞いたことがあります。

私の経験では、年間一件あるかないかくらいの割合で時効取得されていました。これは法務局から農業委員会へ通知がきて、農業委員会では農家台帳を修正します。

A共有持分の放棄

例えば、遺産相続により二人の兄弟が相続し共有名義になっていた農地を、その共有者の一人が放棄することです。放棄することによって、必然的に残った兄弟の人の名義になります。

よく行われるのは、兄弟の共有名義で複数の農地がある場合、お互い折半になる面積分をお互いに放棄しあって、半分づつ単独名義にするというものです。ただ、噂によるとこの方法でも贈与税がかかるらしいです。詳しくは地元税務署に問い合わせてください。



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