5.許可申請手続き

(1)許可申請者

3条許可申請者は、原則として譲渡人と譲受人の連署によります。しかし、以下の場合は譲受人が単独で申請できます。

これは名義のことであり、実際に申請する人という意味では、譲受人が窓口に来て申請する場合もありますが、大部分が不動産屋や行政書士などです。委任状があれば何の問題もありません。

@競売・公売の場合(農地法施行規則第10条第1項第1号)。
A判決・審判の確定、調停が成立した場合(農地法施行規則第10条第1項第2号)。

(2)添付書類(農地法施行規則第10条第2項)

3条許可申請書に添付する書類は、以下のように法定添付書類と「その他参考となるべき書類」としたものがあります。まずは申請農地がある市町村農業委員会に出向いて、「3条の添付書類一覧をください」と言うともらえます。

@法定添付書類

・土地の登記簿謄本
・法人が権利を取得する場合は、その法人の定款または寄付行為の写し
・農業生産法人の場合は組合員名簿または株主名簿の写し
・単独申請できる場合には、単独申請の要件を満たすことを証する書面
・その他参考となるべき書類

となっています。
これは法定添付書類であり、実際には「その他参考となるべき書類」がたくさんあるのが現状ですが、市町村によってバラバラのため多いと思われるものを以下にあげます。

A法定ではない添付書類

・委任状(これは窓口に来る人が申請人でない場合は当然必要になります)
・位置図(都市計画図や農業振興地域区域図などが多いです。縮尺は10,000分の1〜50,000分の1が一般的です。申請地の市役所の都市計画課や農政課で売っています。この図に「申請地」と落とせばいいのです。)
・案内図(住宅地図のコピーで大丈夫です。農業委員会によってはネット地図のコピーでも大丈夫の所もあります。位置図と同じように示せば大丈夫です。)
・公図(法務局で必要な地番を書いて申請すれば簡単にもらえます。市役所の資産税課などにもあります。)
・住民票(譲受人のみ、市町村によっては譲渡人も必要であったり、両方必要なかったりします。)
・作付計画書(何を作付けするとか、いつごろから作付けするとか、農機具は何を持っているとかです。書式は農業委員会にあります。市町村によっては必要としない場合もあります。)
・三年三作誓約書(最低でも三年間は買った農地を作付けしますというもの。都道府県によっては必要としない場合もあります。)
・農家証明書または耕作証明書(市町村によっては農業経営状況調査書が必要な場合があります。いずれも譲受人の住所地の農業委員会で発行してくれます。)
・売買または貸借契約書の写し(譲渡人と譲受人が取り交わした契約書の写しです。これを添付資料とする市町村はあんまりないと思います。)

(3)受付から許可までの流れ

@受付

各市町村農業委員会では受付期間を設定しています。多くは2種類に分類できます。一つ目は毎月15日までとか受付締切日を設定する場合。
二つ目は毎月5日から10日までとか、その期間だけ受付する場合があります。

どちらにしても、その期間までに申請されれば、同じ月の農業委員会総会に議案としてかけられます。譲受人が申請地以外に住所がある場合で平成24年4月1日以降は翌月になる農業委員会もあります。農業委員会総会は毎月行われていて、25日などの下旬に開催される市町村が多いと思います。

また、申請内容によっては農業委員会総会までに書類の補正や追加書類を求められることがあります。譲受人が申請地以外に住所がある場合で、譲受人がどういう人物か添付書類では判断できない場合は、受け付けた農業委員会が譲受人申請地の農業委員会に経営状況を文書で依頼する市町村もあります。

A審査

・譲受人が申請地に住所がある場合(許可権者を参照)
農業委員会によっては、農業委員会総会前に担当農業委員を交えて事前審査を行う農業委員会もあります。

受付された申請書は、市町村農業委員会総会において議案として審議されます。まず、譲受人の経営状況が示されます。家族の農業従事状況、農機具の保有状況、現在の経営状況、農地の保有状況などです。

譲受人と申請地が一緒の場合は、農業委員の誰かが譲受人を知っているケースが多く、その知っている農業委員が、「この人だったら大丈夫」とお墨付きをすれば、他の農業委員も異論を唱えずにすんなり許可になるケースが多いと思います。

・譲受人が申請地に住所がない場合(許可権者を参照)
農業委員会許可までは同じ手続きです。農業委員会総会の場では、農業委員は譲受人を知らないこいとが多いですので、添付書類にある譲受人の経営状況で判断します。

隣接市町村でそれなりに農地や農機具を持って農業従事日数があれば、すんなり許可相当の意見決定がされますが、そうでない場合、例えば距離が遠いとか、農地を誰かに委託しているとかがあると不許可になるケースが多いと思います。

受付から許可書受領までの期間は、譲受人が申請地に住所がある場合は、早いところで1週間、遅くとも1ヶ月以内でしょう。住所がない場合は、早いところで1ヶ月、遅くとも2ヶ月程度でしょう。いずれにしろ、各農業委員会で標準事務処理期間を定めていますので、農業委員会に問い合わせてみましょう。

B許可の場合と不許可の場合

◎許可の場合
農業委員会総会で許可になったものは、農業委員会終了後の次の日などの即日または数日以内に許可書が譲受人と譲渡人へ合計2部発行されます。

◎不許可の場合
不許可通知が発行されます。これには審査請求ができる旨の教示が書かれています。処分に不服の場合は、上位官庁(都道府県)に審査請求できます。



前ページ許可の判断   トップページ   次ページ農地売買・貸借(農地法第3条)の留意点