D 読者からの農地転用と農地売買・農地購入に関する質問

読者が現実に直面している農地関係の問題について質問がたまにきます。当方としては、お答えする義務はありませんが、その答えを説明することが当HPにとって有意義と判断できるものについてのみ下記のように取り上げ、答えというか現実的対処法を公開します。質問したい場合はお問い合わせをご覧ください。お断りしますが、回答はあくまで私の個人的意見です。これによって読者が損害を受けたとしても、当方では一切責任を負いませんのであらかじめご了承下さい。自己責任でお願いします。

●質問趣旨 最終処分場隣接地の敷地拡張の農振除外が認可の可能性は

Q.当社は最終処分場を営んでおり、拡張の為近隣(隣接している)の土地を取得しようとしております。そこが俗に(あおち)です(荒れ放題です)。近隣、地権者は是非にといわれていますが、市役所の農林水産局が手ごわいです。広さは2HAほどです。いくら近隣の合意、地権者が望んでいる、後継者がいない、この土地でないと、事業が成り立たない。等々・・・でも、お役所はそんなの関係ないみたいです。筆者さんは、直接除外申請を仕事として受け付けておられませんでしょうか?されていらっしゃらないのであれば、良い方法等は御座いませんでしょうか?

A.最終処分場隣接地の敷地拡張が可能かどうかということですね。しかも2ヘクタールという広い面積ですね。結論から言ってしまうと非常に難しいと思います。質問者の言う「近隣の合意、地権者が望んでいる、後継者がいない、この土地でないと、事業が成り立たない」などは市役所にとっては関係ないです。要は農振法第13条第2項各号に合致しているかどうかです。今回の敷地拡張予定地のまわりの農地以外がどの程度分布しているのかなど読み取れませんが、面積がかなり広いので引っかかりやすいですね。市役所は農用地区域内でなくても農用地区域外に作ればと言うでしょう。利便性以外に隣接でなければならない理由があるのでしょうか?例えば処分場系の法律改正があって、そのために既存施設や設備の増強をしなければならないとか。他に除外後の他の法律の許認可の可能性があるかも引っかかります。2ヘクタールとなると、除外後の農地転用で面積要件や集団性の破壊などで引っかかってしまいます。これも指摘されるでしょう。私の過去の経験上では、処分場の設備増設に伴い20アール程度の隣接地の除外の認可がおりたことがあります。その場所はその農用地区域の角にあり、回りにぽつりぽつりと分家住宅がある農用地区域だったからです。したがって今回の案件の回りの状況にもよりますが、面積を抑えて何か隣接地でなくてはならない理由をしっかり示さないと難しいと言わざるを得ません。

●質問趣旨 農地転用後土地売却、その後都市計画法違反、それが農地法違反かどうか

Q.市街化調整区域で農地の場所を農家が農地転用して、すぐにA会社に売却して、その半年後程度にまたB会社に売却。そのB会社が、建物(鉄筋パイプ)を建ててしまいました。建物の中に資材を沢山置き、そこで、塗装などもたまにしています。建築局による違反(都市計画法違反)となり、建物は工事停止とされています。(市街化調整区域ですが、当たり前のように何も変わらず倉庫として使用しています) しかしその前に農地転用の目的はなんだったのか?もし農地転用して売却して、その購入した会社(個人)が建物を建ててしまうのが可能であれば、誰しもしてしまうのではないでしょうか。都市計画法違反の前に、農地転用違反にならないのでしょうか?

A.正直言ってグレーです。市町村によって判断が分かれるところです。ただ最初の農地転用した方は、農地転用目的の用途として少しでも使用したのであれば、農地法違反という扱いにはしない市町村が多いと思います。問題はB会社です。厳密に言うと農地法違反とは言えないと思います。しかし、B会社は明らかに都市計画法違反なので次回B会社が譲受人として農地転用しようとすると農地法違反と指摘されるかもしれません。おっしゃる通り、農地転用許可書を手にして地目変更登記をしてしまえば、その後の売買は自由です。その後買った方が何するかは今度は都市計画法の問題となるので、農地法違反として問えない可能性があります。

●質問趣旨

Q.農地を購入して、動物病院とペットホテルサービスを併設したビジネスを行うことは可能でしょうか?

A.農地を購入して動物病院とペットホテルサービス併設施設を建設したいということだと思います。まず、農地の中でも場所によって可能性があるかどうか変わると思います。まず、農業振興地域農用地内、いわゆる青青では除外申請の段階で×でしょう。優良農地を潰してまで、そこに建設する必要性があるかを考えると、必要性は感じられないと判断されると思われます。次に、農業振興地域農用地外、いわゆる青白や白白だとどうか。農地が続く2種農地も同じ判断になりそうです。では、比較的住宅が点在して市街地化している3種農地ではどうか。この場合可能性が多少あります。農地の譲受人が購入予定農地のすぐそばに住んでいたりすると可能性がもっと出てくると思います。

●質問趣旨 市街化区域内の農地売買

Q.市街化区域内の農地を購入、宅地に転用して販売する場合において5年間は転用・売買できないですか?その他の法に関しても宜しくお願いいたします。

A.「市街化区域内の農地を購入」とありますが、3条(農地を農地のままで所有権移転)で申請すると許可を受けて農地のままで使う必要があります。したがってこのケースの場合、おっしゃる通り何年か農地として利用するよう誓約書等を提出させる農業委員会もあります。しかし、当案件は市街化区域ですので単に5条(所有権移転を伴う農地転用)の許可申請ではなく届出で済みます。届出ですから、「この農地を○○氏へ売買し○○に転用します」という内容の届け出を出すだけです。届出書は農業委員会事務局においてありますし、市町村によってはホームページでダウンロードできる場合もあります。届出提出後、即日〜2・3日後、遅くとも1週間程度で受理通知が発行されますので、それを添付して登記すれば売買が完成します。

●質問趣旨 駐車場目的の農地転用

Q. 農地を賃貸借契約を締結し、駐車場として転用する場合についてご教示くださるようお願い致します。

案件
条件1 農地の所有者“A”と不動産業者“B社”との間においてA所有の農地(地目:畑 地積:500u未満)を駐車場として造成後に、B社と賃貸借契約を締結して駐車場の運用を委託する。
条件2 B社が運用のため、C社(小規模小売店舗)との間において賃貸借契約を締結して、C社の従業員用の駐車場する。
この場合、農地法第5条第1項許可申請を賃貸人A、賃借人B社とする申請ができるでしょうか?
*A ⇒ B社 ⇒ C社 
この関係が“転貸”となるでしょうか?

A. まず、農地所有者AからB社へは漠然とした駐車場としての運営を委託するということで、農地をやむなく潰すという必要性がありません。しかし、C社の従業員用駐車場の場合、年中近くの道路に路駐している状況であれば必要性が感じられます。C社の社員がC社に近い所に駐車場を求めるという必然性があるから、農地転用の理由としては十分認められると思います。したがって、このケースの場合、賃借人がC社、賃貸人がAとする農地転用であれば理由としては問題ありません。現実問題としては仲介に不動産業者Bが入るということになるでしょうが、申請書類の中に不動産業者Bの名前を入れると色々突っ込まれるかもしれません。一方、上記例であると賃貸人A、賃借人B社とする申請は必要性がなく認められず、A ⇒ B社 ⇒ C社は当然転貸扱いと認識されるでしょう。

●質問趣旨 農地売買

Q. 父から相続した田を耕作する必要が無くなったので近所の耕作されている若い方に無償でもいいので譲りたいのです。農地法第3条に双方(譲渡側と譲渡される方)が問題ない場合

1、無償での譲渡する場合の手続きについて
2、個人の資格で売買の手続きする方法(法務局への手続き)

A. 「双方が問題ない場合」とは違反や農家資格のことでしょうか?ちなみに違反については譲受人側は違反していたら問題ありですが譲渡人側は違反していても問題ありません(本文を読んでいれば理由はわかると思います)。譲受人側で問われるのは農家資格です。これも問題ないということでしょうか?1、「無償で」とのことですが有償だろうと無償だろうと手続きは何も変わりません。でも、無償であるならば余計な手間(登記等)を考えなくてすむ都道府県農林公社などに仲介を依頼した方がよいでしょう。2、「個人の資格で売買の手続きする方法(法務局への手続き)」とありますので許可後の話しでしょうか。許可後法務局で登記をする際は、農地売買は詳細な図面が必要ないため個人で行っても何の問題もありません。司法書士や行政書士に頼めば数万円から20数万円くらいかかると聞いています。農地売買の手続きは簡単です。申請書や添付書類は申請農地を管轄する法務局に問い合わせて、それらを揃えて申請すればOKです。もし間違っていても親切に教えてくれます。ちなみに、添付書類には間違いなく3条許可証がいるはずです。

●質問趣旨 新規就農者の農地購入・農地借地

Q. 農家資格取得を目指して私(○歳)は農業大学の短期プロ農家用養成コース(1年間)を受講中で、息子(○歳)は2年制の農業大学に入学しました。さて、農地を購入または借地しようと府の就農相談窓口、市農政課、農業委員会、JAへ相談に行きましたが、2年以上の農業経験が必要、農業経験がないと農地が借りられない、違法な借り方で農業をしても経験とみなさない、等々、パンフレット等には新規就農者を応援するような文字が並んでいるのに、さて中に入っていくと否定的なことばかりで、就農意欲も萎むばかりでした。しかし、なんとか農地を手に入れ農業を始める方法はないかと探していたところ、田舎暮らしをあっせんする不動産会社の農地付き古民家の物件があり農家資格取得可とあったので、さっそく見学しました。聞いてみると仮登記して2〜3年農業すれば農業委員会が許可をくれるというものでした。
今回は、場所が気に入らなかったので交渉に至りませんでしたが、こんな方法があるんなら家の近くで直接交渉で出来るかもと思っていた矢先に、これを読ませていただき、リスクの大きさに又途方に暮れた次第です。そこでご指導いただきたい事項は以下の4点です

1.農地を取得または借地して農業経験を積み農家資格を得る実務的解決方法は無いでしょうか。
2.文中にあった「農用地利用権設定等申出書を市町村に提出すると簡単に農地を借りられるというシステム」は、農家同士の場合で、非農家には適用できないのでしょうか。法律文書は苦手なもので農業経営基盤強化促進法第19条を読みもせずに書きこんでしまいました。
3.仮契約中の農地使用が違法にならないように上記届け出システムを併用するとか違法にならない方法は無いでしょうか。
4.3.以外にも相続問題や10年時効など予想されるリスクを小さくする手立てや工夫は無いでしょうか。農家資格が取れるかどうかのリスクは精いっぱい農業をやるしかないと思っています。
5.やはり、農業法人に就職するか、農家でただ働きしてでも経験を積んで認めてもらうしかないのでしょうか、この地域で認めてもらってもその時期に譲ってもらえる農地がその地域内で見つからなかったらとか考えてしまいます。

A. まずは、相対(要するに地主と契約書などをかわして借りた場合で農業委員会を通していない場合)で農地を借りた場合や仮契約・仮登記していたとしても、農家資格を得るためには何の役にも立たないことを最初に言っておきます。農家資格を得るためには、最初に農業委員会に自分が農地を借りて農業をしていると知らしめる必要があります。そのためには、これから新規就農者になろうとしている人には農地法第3条での農地貸借は無理なので、農業経営基盤強化促進法の農用地利用権設定等申出書を市町村農政課に提出します。これが市町村農用地利用集積計画に準拠した内容であれば、そのまま広告(同法第19条・20条)され、利用権設定(農地を公的に借りた状態)されます。ここで問題なのが市町村の対応です。はっきり言って、あまり新規就農を受け容れたがらない、または、やる気のない市町村はQ.にもあるように色々条件を出してハードルを高くします。これは国が法整備や補助金などで新規就農を応援しているため、それをあからさまに否定することはできないから、ハードルを高くして断る言い訳を作っているのでしょう。一方、耕作放棄地が問題となっている市町村や、農業者の高齢化や過疎化に悩んでいる市町村、担当者がやる気のある市町村などは、新規就農者を積極的に受け入れたいのでなるべく簡単に受け入れようとします。ですから「仮登記して2〜3年農業すれば〜」という市町村もあるのです。試しに隣接市町村農業委員会の対応を調べてみてはいかがでしょうか。
 次に普通の素人でも農業経営基盤強化促進法の利用権設定されるのかと疑問に思うことでしょう。非農家に対しては同法第18条第2項第6号・第7号に書かれています。第6号には「農作業に常時従事すると認められない者である場合」とあります。要するに農家ではない「農業を志している非農家」のことを指しています。「賃貸借又は使用貸借の解除をする旨の条件」とは、要するに貸すことをいったん認めるけれど様子を見てダメそうと判断すれば後からでも解除しますよ、というのが第6号の趣旨です。また、第7号にはその者(非農家)たちには毎年農地の利用状況について報告しなければならないことが書かれています。農用地利用権設定等申出書を申請しに来た方が非農家と市町村が判断したら、これらの断り文を注意事項に書きこんだ農用地利用権設定等申出書を渡し、これを提出することによって貸すことができます。市町村農政課には普通の農家用の同申出書と解除条件を記載した同申出書がある市町村と、すべて解除条件を記載した市町村と、昔のままの解除条件を記載していないものしかない市町村がありますので電話で確認してください。
 4.についてはトップページの「C 農地を農地のままで売買するには」を熟読すれば答えは出ます。
 5.については前段は関係ありません。下段は運ですね。ただ、農家資格をとって農地取得したいとなったら、まずは農業委員会事務局や農業委員に常にアピールしておけば、やる気のある農業委員会であれば紹介はしてくれるものと思います。

●質問趣旨 農振除外して分家住宅建設

Q. 義父より遺産相続した農地について 質問させて頂きます。
 市街化調整区域にある畑ですが、義父の時代から知人にお貸ししています。息子たちが、家を建てるようにと、生前から言ってくれていた畑です。その時期になり行政書士、測量事務所等の方に調べて頂き許可がおりない土地と伺い農業委員会、市役所の建築科等相談に行きました。やはり、家は建てられないとの事でした。義父が線引き後に取得している事などすべてに条件にかなっていないとの事。畑として売るしか出来ないとの事でした。二人の息子の夢は遠のいてしまいました。300坪あり、ありがたいと感謝してまいりました。あきらめきれず、いろいろ調べてきましたが 絶対的に建築不可能な現実でしょうか。

A. 農地転用以前の農振除外の問題だと思います。質問の文章が説明不足の部分があり判断できませんが、おそらく農業振興地域内で農用地区域内なのでしょう。しかも農用地区域内の境界線に接していないのでしょう。接していれば可能性は無きにしも非ずと言えます。また、接していなくても比較的規制の緩い場所があります。それは対象地の近く数百m以内に住宅は皆無かどうかで判断できます。皆無であれば住宅用地としてはまず無理でしょう。一軒でもあれば可能性は無きにしも非ずです。それが建てられた経緯を市役所都市計画課に聞いて違いを質問してみましょう。
さて、ご質問のように実際に無理と言われた場合は現実的に対処しなければなりません。ご質問の対象地はおそらく農業振興地域内で農用地区域内でしょうから、近くの別の場所で許可がおりそうな農地(できれば農用地区域外と呼ばれる俗に言う白地)を購入するか農地交換する方法しか思い浮かびません。質問者が市街化調整区域内に住んでいなくて、親戚にも住んでいる人がいなければ答えがでませんが、市街化調整区域に住んでいれば分家住宅として建てられます。それにも要件がありますが、建てる人の要件、場所の要件をクリアしていないと建てられませんので、事前にその場所を市役所の都市計画課と農政課と農業委員会に示して尋ねてみるといいでしょう。可能性があれば、その土地所有者と協議して購入または交換の交渉をしてみてください。市街化区域よりは断然お得なはずです。交渉が成立すれば、分家住宅目的の農振除外を申請し、認可後に分家住宅目的の農地法第5条の農転申請になります。それにより、農振除外を経て農地転用できると思います。ちなみに、ご質問の対象地が大きな道路に接していれば住宅用地としてはダメですが、別の用途として農振除外が認められ、農地転用ができる可能性があります。詳しくはトップページ以下をご覧ください。

●質問趣旨 分譲住宅用の除外と農地課税

Q 先日、父親が無くなり、田舎の土地を相続することになりました。 両親は5年ほど前に田舎から都会に出てきており、田舎の家は空き家に、土地はただ同然で1年更新で貸しております。 そのため、固定資産税等は赤字の状態です。 売却をこころみようと地元の不動産業者に確認したところ、相続した2,200坪のうち、住居以外の大半は青地農地であることが判明しました。 その不動産業者は農地は扱っていないので、白地農地に転換すれば、大手デベロッパーに住宅用地として販売する話を持ちかけられるということでした。 拝見したWebサイトには、自分で開発する件は説明がありましたが、白地農地に転用する話がありません。 白地農地とは、農業振興区域からの除外を申請するということでよいのでしょうか?
何軒かに貸していますが、一軒が家畜小屋を建てたところ、急に固定資産税が上がってしまいました。 税務課に確認したところ、屋根がつけば住居並みの固定資産税になるということでした。 徴税のためには、かなりフレキシビリティがありますが、税金の問題と、この農地転用の問題とは、別物なのでしょうか?

A 前段の質問は、「白地農地に転用する話がありません。 白地農地とは、農業振興区域からの除外を申請するということでよいのでしょうか?」とありますが、この表現は間違っています。白地農地に転用ではなく青地農地(農用地区域内)から白地農地(農用地区域外)に除外するという表現が正解です。質問の趣旨は、相続した2,200坪の大半の青地農地を大手デベロッパーに住宅用地として販売する目的で除外して白地農地にして農地転用できるか?ということでしょう。そもそも農用地区域内(青地農地)は農業振興地域の中で最も開発が制限されている区域です。やむを得ず農地転用する場合は、農地転用の前に除外の認可を受けなければなりませんが、本文にも書いた通り必要最小限の面積でやむを得ない理由がないと認められません。その青地農地近辺に家が一軒でもあれば、分家住宅1棟程度の面積は場合によっては認められる可能性が無きにしも非ずですが、必要性の無い利益目的の除外(除外認可後に農地転用許可申請)はほぼ不認可と言ってよいでしょう。詳しくはトップページ「B 農振除外とは」をご覧ください。
 下段の質問の答えを先に言うと農地の課税はまったく別物と考えてください。農地法と地方税法はまったくリンクしていません。固定資産税の課税要件は現況主義です。登記上の地目が田や畑であっても現況で建物があれば宅地課税扱いになるし、砂利が敷いてあれば雑種地課税扱いになります。ですから、農地法の許可を得ていない違反転用農地でも税金は農地課税ではなくなるのです。


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